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レ点を打ちまくれ

2019年08月31日
 先日のお盆休み。バイト先も休みなら子供教室の予約も少なかった。したがって、こちらが希望しているわけでもないのに、大型連休ゲットである。9日間、収入のある仕事にありつけなかった。サラリーマンにとっては黄金の時間でも、その間、有給がでるわけでもなく、ただただお金が入らないフリーターや自営業の人にとってはひたすら迷惑なだけである。今年は5月もそんなのがあって、一体、国の人は何を考えているのかな?と思ったものだ。その分、税金とか年金の取り立てをカットしてくれれば全然OKなんだけどさ。

 ボクはルーティン型の人間である。だから、自分が欲しいわけでもないタイミングで連休とかもらっても、全然うれしくない。ボクの場合、休みになったからといって制作のペースを急激にあげることなどできない。そういう身体のリズムになっていないから、いきなり一日8時間制作して、その間集中して仕事ができるかと言われたら、ボクはできない。8時間集中してやるには、それなりの日々の習慣化が必要なのだ。

 ボクの強みは毎日制作することはできることだ。ただし、朝と決めたら朝にしかできない。それ以外の時間もやることはあるけれど、うまくいかないことが多い。よくアーティストはインスピレーションが降りてきたときに、一気に集中して制作をするなんてことがイメージとしてはある。実際そういう人間が多いのも事実だ。ボクにも、そういうことはある。ただし、年に一回あるかないかだけど。で、それが全部傑作になるかっていったら、そんなわけはない。毎日コツコツつくった作品と比べて、決定的な差があるかと言われたら、それはないと思う。正直に言うと、ボクはインスピレーションが降りてきたときにだけ、手を動かしたり、仕事が決まったときにだけいそいそと制作をするアーティストのことを、あまり好きではない。たまにひらめいたときにだけ、制作して、その出来に一喜一憂する輩をみて、仲間のアーティストが言った言葉は「ああいうのを気晴らしっていうのさ」である。ボクもそう思う。だけどそういうアーティストでも世間で高く評価されることはある。毎日、バカみたいに制作しているボクのような作家でもまったく見向きもされないこともある。しかし不公平だとは思わない。良いものは良いし、悪いものは悪い。努力したから、良いのができるとは限らない。また、毎日制作しているっていうことが努力しているってことなのか?と言われたら、ボクには正直わからない。制作なんかしないで毎日美術史をせっせと勉強することの方が大切な気がするし、社会勉強じゃないけど、いろんな仕事をしてみることとか、海外にいってさまざまな体験をしたり交友をひろめることの方とかが大切なのかもしれない。全部できたらいいけど、人生はあまりにも短い。だから、何をするか選ぶしかない。選ぶってことは他の可能性をとりあえず削除するってことでもある。ボクはバカだし、単純だから、制作を毎日する。理由はそれが性分に合っているからだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 とはいえ、ムカついてはいる。理不尽だとも思っている。もっと褒められたいし、もっと稼ぎたいし、大きな仕事をまかせてくれよって思っている。でもそれと同じくらい、なんかもうどうでもいいやって気分になることもある。失恋しちゃって、この先、ボクがどんなに活躍したとしても、その愛?みたいなものを取り返すことはできないのだと思うと、あとはもうどうでもいいやって思う。

 昔はそれでやぶれかぶれになって、適当に毎日酒を呑んで、くだを巻いて、いろんなことに対して文句を言って、憂さ晴らしして半年くらい過ごせば、それでいい加減嫌になったところで、リスタートすることができた。今のボクはそれができない。焦っているからだ。そんなことしてたら、すぐに40代に突入である。2、3日、何もしないだけで、後悔をする。でも、何かしたからって満足できるのか?と言われれば、わからない。今は昔ほど成功ってこういうものだっていうビジョンが明確ではないし、もしかしたら、今のボクだって成功者なのかもしれない。お金も時間もたっぷりあるわけではないけど、困らないくらいには自由になるし、好きなことを仕事にできているのだから。
 
 ……まぁ、とにかく、わからないときは考えない。連休とかで時間が急にできたときは特に。お盆休みの間は簡単な雑用をピックアップして、携帯のメモ欄にリストをつくっていった。何か思い出す度にリストを追加していく一方で、一つ一つこなしていった。できたらレ点(チェック)をいれていく。これを一週間ずっとやっていった。連休が終わるころに数えてみたら80個ほどの雑用が終わっていた。この数字にはちょっとだけ満足感を覚えた。
 
 ちょっと話は変わるようで変わらないのだが、ボクは実現したいことを書き出して、これを持ち歩いている。それが実現したら、それを別のノートに書いて、普段持ち歩いているメモの項目からははずしていっている。大きな夢ばかりを書いているわけではなく、些細なことがほとんどの実現メモだから、真面目にこなしていくと1年間でノート一冊分くらい、あれやこれを実現させることができる。それはなんとなく雑用のピックアップと、それをレ点を打ってこなしていく作業と似ている。自分にとって大きな夢であったことでも、小さなレ点をたくさん打っていった結果であることは間違いがなく、夢がかなったときでも、それはある日自然にかなっていることに気付くというようなこと多い。


 レ点をたくさん打っていくこと。それが人生の喜びなのかもしれない。それは空しいのかどうか、ボクにはよくわからない。だから、あまり考えないようにしよう。

 とにかくレ点を打ちまくれ!今見えている風景が変わるまで。また、人生に希望が持てるようになるまで。



   堀江和真

uno

2019年08月01日
 暑い。汗が止まらない。夏がはじまった、というような感じの毎日。とにかく汗が止まらない。例年だと汗はかくけど、それでちょっとかきすぎだなと思うことはなかった。今年は違う。代謝が良くなったとみるべきか。体がびっくりしているのか?

 今日はスネオヘアーというミュージシャンの「uno(ウーノ)」という曲を聴くと悶々とするんだよなぁーっていうことについて書いてみようと思う。これはほとんど何の下調べもしないで書いたボクの見解なので、情報としては宛てにしないでほしい。ボクとスネオヘアーの思い出だと思って読んでほしい。

 みなさんはスネオヘアーっていうミュージシャンを知っているだろうか?けっこう有名だと思うんだけど……。日常にあるやるせなさとか、倦怠感とか、そういったテイストを含む楽曲を歌わせたら抜群のミュージシャンだとボクは思っている。
 スネオヘアーの経歴はちょっと変わっていて、もともとは役者をやっていた方で、こちらの方では全く芽が出ず、その当時部屋でこもってつくっていた曲を友人に聴かせたところ、レコード会社にもっていった方が良いと言われ、持っていってみたら評価され、その後はトントン拍子で駆け上がった。どんどん人気者にはなっても、テレビとかたまに役者みたいなことをしても、何となく垢抜けない。演技なんかは多分わざとだろうけど、すごく下手に見える。歌詞もあまりポジティブって感じじゃなくて、すごいけど、すごくないみたいなキャラクターをずっとやっていて、ファンからも支持されていたと思う。

 なんとなく、「ちょっと待てよ」って感じになったのは、ともさかりえさんと結婚したあたりからかな?ともさかりえさんっていえば、ボクが中学校とかだったころはスーパーアイドルって感じだったから、いきなりみんなが羨む奥さんとの新しい生活をし出したかに見えた。ただ、このころかな?いきなり老けだして、すごいおっさんになったなぁーなんてボクは思ってた。
 全然合ってないかもしれないけど、このくらいの時期に出たアルバムのラストを飾っている楽曲が「uno」である。この曲はすごくポジティブで野心にあふれている。内容は「誰になんと言われようと馬鹿にされようと一番、つまりトップを目指す」というような内容である。ボクは最初、この曲を聴いたとき、すごくがっかりしたのを覚えている。キャラに合ってないし、共感もできなかった。失礼だが、調子に乗っちゃってるなとも思った。
 でも、当時はすごく人気もあったから、もしかしたら、正統派で一番になっちゃうんじゃないか?なんてことも思い、すごく期待した。でも、その後スネオヘアーの楽曲ですごくいいなぁって思った曲はほとんどなかったし、勢いもかなり下火になってしまったようボクは思った。実際はまだバリバリ活躍しているのかもしれないが、ボクはおっかけとかでもなんでもないから、そう感じただけかもしれない。
 
 数か月に一度はこのアルバムをまだ聴いている。そしてこの曲のところに差し掛かるとよく考える。ネガティブからポジティブの世界に切り替えようとしたスネオヘアーの熱い思い、そして空回り。急な老け込み、才能の枯渇。
 この曲から自分は変わっていくんだと思ったのかもしれない。そして、それをみんなに表明した。でも、滑った。彼のキャラクターには滑った方が合っていたのかもしれない。でも彼は滑るために歌ったわけじゃあない。おそらく本気でトップを目指したんだと思う。でもうまくいかなかった。
 ボクは思う。でも、これで良かったのだ、と。この時の挑むような気持は、決して無意味なんかじゃあない。その証拠に何度も、ボクは彼の当時の気持ちとその後に思いをはせる。
 
 このブログを書くに当たって、スネオヘアーの奥さんって誰だったかな?名前が出てこないなぁと思い、インターネットで調べてみたら、ともさかりえさんとはその後、離婚したらしい。しかも、離婚は3回目だとのこと。一体、現在の彼はどんな風になってしまったんだろう?今度気が向いたら調べてみよう。アップルミュージックでダウンロードした割と最近のアルバムは一回聴いただけでがっかりしてデータごと消した。

 だが、これからもスネオヘアーを応援したい。いつかテッペンをとった彼の姿をみることができたら最高だ。



           堀江和真