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こんにちは。堀江和真です。ボクは絵を描いたり、作品をつくりながら、毎日を過ごしています。このブログでは、そんな日々で感じた事や起こったことを、のんびり綴っています


さて、春である。例年だと、この時期、ボクはボケ〜っとしている。まぁ、今も他の人からしたらボケ〜っとしているようにしか見えないかもしれないけどさ。


最近は上久保直紀さんという方がやっているカルチュラルライツという一般財団法人と一緒にアートワークを展開している。今回のプロジェクトは去年の夏あたりから、準備をはじめていて、今年の3月あたりから、作品の発表をし始めた。その形態は、ちょっとユニークでトラックの後ろの箱のサイドが開くようになっていて、そこに作品をディスプレイして、即席の展覧会をさまざまな場所で開くことがらできるというもの。


カルチュラルライツのこのプロジェクトは児童施設や商業施設、学校などに展覧会の出張することが多い。美術が好きな人だけが集まる場所ではなくて、あまり興味がない人にも、美術に気軽に触れてもらおうという試みである。


ボクは子どもたちに向けて工作の教室を開いているし、美大を出ているわけではないので、もっと日常の延長から美術を考えている節があるので、こういう企画は面白いなと思った。


カルチュラルライツとの仕事は6月あたりまで続く予定だ。いくつかのアートトラックでの出張とゴールデンウォークには建て直しの決定した古い児童養護施設でのグループ展がある。一つ一つ丁寧にこなしていきたい。


美術をやっていると、いつも思うのは出会いと別れの繰り返しだということ。

何かプロジェクトがあると、さまざまなアーティストやディレクターとチームを組む。仲間だと思うほどの強い絆を感じることもあれば、ちょっとしたキャラバンのような感じで、便宜的に力を合わせることもある。

でも結局は解散をする。目標や目的が解かれれば、密に連絡を取ることは、ほとんどなくなる。


多少飽きっぽいところのあるボクはこれがなかなか自分の性質に合っていると感じている。はてさて、今回のプロジェクトでは、どんな人たちと出会い、そして別れていくのか、ちょっとだけ楽しみだ。


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堀江和真


こんにちは。堀江和真です。ボクは絵を描いたり、作品をつくりながら、毎日を過ごしています。このブログでは、そんな日々で感じた事や起こったことを、のんびり綴っています。


今日はBankARTの池田さんについて、ちょっと書いてみようかな。


ボクが、池田さんと出会ったのは、2011年の夏だった。彼が主宰するBankARTのレジデンスにボクは参加したのだ。東日本大震災があった年で冷房などはあまり使わず、節電しようという雰囲気があり、会場であるBankART NYKはいつも蒸し暑く、時間がなんだかゆっくり流れるような感じがしたのを覚えている。ボクは大好きな絵を夢中で描いて、それが本当に楽しかった。当時、ボクは美術が学問であることすら認識がなかったし、いわゆる現代アートといわれる範囲のものを何にも知らなかった。絵を描いててハッピー、それだけ。もちろん評価なんてされるわけもなく、池田さんとは、ほとんど話すらできなかった。だけど、このハッピーな時間...暑くて、身体はクタクタでも、わくわくしてたまらないといった感じは今でも覚えている。


あれから、11年、BankARTに足を運ぶうちに、池田さんとは少しずつ仲良くなっていった。ボクは少しだけ美術について学び、作品も少しロジカルに考えるようになった。BankARTに行けば、世間話をし、近況報告や、どんな作品をつくってるかなど、気軽にできるようにもなった。

ここ数年はボクは池田さんの顔をみると、いつも「なんか大きな仕事くださいよ」とまるで挨拶みたいに繰り返した。そうするといつも「堀江くん、もうちょい頑張れ。ネクストだ、ネクスト」と池田さんは少し困ったような顔をして返事をした。


頑張れ堀江くん。君はやればできる。まだ、本気出してないだろう?ネクストだ、ネクスト。


何かきっかけを掴めば君は活躍できる。もっとベストをつくせ、ネクストだ、ネクスト。


池田さんはいつでも、ボクにネクストと言いつづけてくれた。コイツ、駄目だとは言わずに、ネクストだと答え続けた。


池田さんとボクのような関係性は池田さんのまわりでは、おそらく特別なものではないだろう。池田さんの周りに集まってくるアーティストはみな、そのようにして、激励されていたのだと思う。


でもまぁ、物事にはいつか終わりがやってくる。


3月16日、池田さんは帰らぬ人になってしまった。


もう、ボクにネクストだ、と言ってくれる人はいない。無償に寂しい。先日、もっとも尊敬し、大切に思う人も、この世から去ってしまった。心にぽっかりと穴が空いているようだ。感情が削ぎ落とされ、悲しさとか楽しさとか、あんまり感じない。全部ガラス越しのような感じがする。


ネクストだ、堀江くん!!とあの世から、池田さんは叫んでいるかもしれないな。


ごめん、悪いけど、ネクストの所在がよくわからないや。ドアは開かない、カギはない。おまけに開ける気もしない。ただ、仕事は山積みだ。機械的に手を動かし、制作を続けるしかない。



堀江和真