こんにちは。堀江和真です。ボクは絵を描いたり、作品をつくりながら、毎日を過ごしています。このブログでは、そんな日々で感じた事や起こったことを、のんびり綴っています。
さて、ブログに書こうと思うことは、大抵ぼんやりしているときに、「あっ、これを書こう」と思うものですが、そのまま何を書こうかも忘れてしまうか、書き出してみるも、それがとてもくだらなく思えて途中で投げ出してしまうことが多いです。今回の投稿がうまくアップロードされていれば、それらを免れて、なんとか最後までできたということになりますが、果たしてどうだろう。
ちょっと昔の思い出を書いてみよう。
もう15年くらい前だろうか?ボクは画材屋で働いていたことがあるんだけど、そのときの事...。中年の男性のお客様が来て、額装を頼みたいと自分の作品を持ってきた。その作品は画用紙に描かれたパステル画で、そのどれもが空だけを描いたものだった。雲と空、夕焼けだったり朝焼けだったり、よくわからないが、色とりどりの空の絵で、それがパステルでゴリゴリと描かれていた。男性はとても楽しそうに、絵の説明をし、今度展覧会を開くのだと言った。その後も男性は何回も画材屋に通って、額縁を選びたくさんの空の絵が、その中におさめられていった。あるとき、男性はボクにこれらの作品の販売価格はいくらにしたら良いだろう?と相談してきた。ボクはちょっとわからないと答えたような気がする。彼は作品を画廊の中に並べ、それらがどんどん売れていく様を想像しているようだった。身体をくねくねとさせ、満面の笑みを浮かべていたのをよく覚えている。ボクの方は多分ほとんど売れないだろうなと、思ったけれど、もちろんそれは言わなかった。
お世辞にも上手い絵でもなければ、何か惹きつけられる作品でもなかった(ボクにとっては)。ただ単に素人が描いた空の絵。でも、描き手の本人をみれば、そこに無数の空が広がっているように見えた。夢中で空を描く、その中年の男性はたまらなく幸せそうに見えた。だから、ボクはたまに彼と、その絵を思い出す。
額装に大枚を叩いて行われた彼の個展はいかなるものだったのか。それはわからないが、以降ボクの働く画材屋に彼がおとずれることはなかった。
今も、彼が空を描き続けているといいなぁとたまに思う。作品が流通することなんかより、その方が100倍素晴らしい。
堀江和真