こんにちは。堀江和真です。ボクは絵を描いたり、作品をつくりながら、毎日を過ごしています。このブログでは、そんな日々で感じた事や起こったことを、のんびり綴っています。
...先日行ってきました。大人気の展覧会「ゲルハルト.リヒター展」。現在も国立近代美術館にて開催中である。
リヒターは現役のペインターとしては、その作品が、最も高い評価と価格で、他を圧倒する存在であり、こんなボクでも一度は実物を拝みたいと思う作品を描くアーティストの1人である。
絵画と写真のそれぞれの特性を交叉させ、さまざまな思考実験をもとにペインティングをする作家として知られている。多分多くのアーティストはこのリヒターの仕事を十分に理解していることであろう。
しかし、あえて言うが、ボクはよくわかっていない。本を何冊か読んだが、部分的に理解したと思うと、すぐに忘れてしまうというのの、繰り返しだ。
リヒターのインタビューやメモを主軸にした本、「絵画論 写真論」をめくれば、示唆に富んだヒントがたくさん転がっている。しかし、これらはそれぞれ年代の違うリヒターの発言をまとめたものだ。そこには当然、理論の再考があり、一本のロジックとして全体をみたとき矛盾が生じてくる。意図を十分に汲めてないうえに、年代別の発言と作品もうまくリンクできない。リヒターの作品は鮮やかな色彩のアブストラクトペインティングなどで一般の方にも大変人気だが、ボクにとっては、なんだかよくわからないことが多すぎて混乱するばかりである。
加えて、展覧会を見終わったあとの空虚な気持ち。これは一体なんだろう?
後日、同じスタジオを使うアーティストに感想の共有をしてみたところ、空虚さはリヒターをはじめとしたコンセプチュアルアートの一つの特性だし、空虚だからと言って、それが悪いわけじゃないとのことだった。
言われてみて、たしかになーと思った。けれど、ボクの魂は潤いを求めているんだよな。とほほ。
堀江和真
こんにちは。堀江和真です。ボクは絵を描いたり、作品をつくりながら、毎日を過ごしています。このブログでは、そんな日々で感じた事や起こったことを、のんびり綴っています。
さて、ブログに書こうと思うことは、大抵ぼんやりしているときに、「あっ、これを書こう」と思うものですが、そのまま何を書こうかも忘れてしまうか、書き出してみるも、それがとてもくだらなく思えて途中で投げ出してしまうことが多いです。今回の投稿がうまくアップロードされていれば、それらを免れて、なんとか最後までできたということになりますが、果たしてどうだろう。
ちょっと昔の思い出を書いてみよう。
もう15年くらい前だろうか?ボクは画材屋で働いていたことがあるんだけど、そのときの事...。中年の男性のお客様が来て、額装を頼みたいと自分の作品を持ってきた。その作品は画用紙に描かれたパステル画で、そのどれもが空だけを描いたものだった。雲と空、夕焼けだったり朝焼けだったり、よくわからないが、色とりどりの空の絵で、それがパステルでゴリゴリと描かれていた。男性はとても楽しそうに、絵の説明をし、今度展覧会を開くのだと言った。その後も男性は何回も画材屋に通って、額縁を選びたくさんの空の絵が、その中におさめられていった。あるとき、男性はボクにこれらの作品の販売価格はいくらにしたら良いだろう?と相談してきた。ボクはちょっとわからないと答えたような気がする。彼は作品を画廊の中に並べ、それらがどんどん売れていく様を想像しているようだった。身体をくねくねとさせ、満面の笑みを浮かべていたのをよく覚えている。ボクの方は多分ほとんど売れないだろうなと、思ったけれど、もちろんそれは言わなかった。
お世辞にも上手い絵でもなければ、何か惹きつけられる作品でもなかった(ボクにとっては)。ただ単に素人が描いた空の絵。でも、描き手の本人をみれば、そこに無数の空が広がっているように見えた。夢中で空を描く、その中年の男性はたまらなく幸せそうに見えた。だから、ボクはたまに彼と、その絵を思い出す。
額装に大枚を叩いて行われた彼の個展はいかなるものだったのか。それはわからないが、以降ボクの働く画材屋に彼がおとずれることはなかった。
今も、彼が空を描き続けているといいなぁとたまに思う。作品が流通することなんかより、その方が100倍素晴らしい。
堀江和真
こんにちは。堀江和真です。ボクは絵を描いたり、作品をつくりながら、毎日を過ごしています。このブログでは、そんな日々で感じた事や起こったことを、のんびり綴っています。
さて、今回は先日読んだ本、「騎士団長殺し」について、ちょっと書いてみようかな。
「騎士団長殺し」は村上春樹さんの書いた小説のタイトルである。たしか現段階では最新作ではあると思う。といっても2年ほど前?の小説ではあるんだけど。
ボクはこの本を読もう読もうと思いながらも、月日は流れ、今に至ってしまったわけである。本が出た当初は賛否両論ではあるものの、悪評の方がよく耳に入ってきた。まぁ、そんなのはどっちでもいいんだけど。
この物語、主人公は画家である。世間的な認知は低いが、才能を持った画家。彼は自分の才能をひけらかせたりはしない。クールなのだ。
一度、本気を出して絵を描けば、人々は感動し、日常は非日常に、怪奇現象は起こるし、謎に包まれたお金持ちからは高額の作品依頼が来る。その上、女の人にもモテる。わけなく色々な女性と交われる。
自慢じゃないが、ボクはこれとは正反対の毎日である。なんとなく「チェッ!」と思わないでもない。
「ちぇっ!」
まぁ、でも村上春樹さんも、ボクを傷つけるために、この本を書いたわけではないんだろう。当たり前だけど。
作品とは、すべからず画家の血によって描かれなくてはならないというセリフが有名なムンクの台詞よろしく、生々しい迫力を持つ絵画を描く画家が、今回の主人公である。
ボクだって若いころは、そんな絵が描けると思っていた。でも、今はそんなことができるとは、とても思えない。
話を戻そう。騎士団長殺し、面白かったですよ。ボク、ハルキストなんで。次回作も、お待ちしておりまーっす。
堀江和真