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創造力なき日本

2016年11月16日
 こんにちは。堀江和真です。村上隆さんの本「創造力なき日本」という本をブックオフの100円コーナーで発見したので読んでみました。美術に関する本で興味のあるものが100円で手に入ることはあまりないので、ちょっとだけ、ほくほくしながら読みました。

 村上さんといえば、自身は世界的なアーティストでありながら、カイカイキキというアーティスト集団を運営している方としてしられている。またカイカイキキにおいては、その厳しい教育スタイルで次々に人が去っていくことが知られている。この本ではアーティストとしてやっていくにはどうあるべきか?というようなことを淡々と語っているけれど、書いてあることはいたってまともだなと感じた。
 例えば、あいさつを徹底する、報告書を描かせる、体力をつけなさい、計画を立てなさい、予算の管理を徹底しなさいといったこと……こういうのは普通の社会人とは変わらない。当たり前のことを当たり前のようにやるっていうことなんだけど、ここからわざわざ本に書かなくちゃいけないと思っている村上さんの気持ちはすごく絶望的なんだろうなぁって思ってしまう。
 あと、ちょっとなるほどって思ったところだと、アーティストは社会のヒエラルキーの中でもっとも下だと認識するべきだといっていたこと。アーティストは特別だとかそんなことを言って偉そうにしてても売れない。媚びを売ってでも、とにかく作品を世に広めていく。そういう感覚がなければやめたほうがいいという点とかは、色々考えさせられた。でもサービスの仕事をしている人で一流の人っていうのはどこまでも謙虚で、ここまでへりくだってはいないけど似たようなものがあるなって思う。赤塚不二夫さんも「自分なんて最低だって思っていればいいんだよ」というようなことを言っていたと本に書いてあったのを思い出した。
 
 色々とけっこうまともなことが書いてあってなんとなくつまらないなぁという点はあったものの、全体的にいって良書だと思った。村上さんは絵が上手でない、才能もない、でも絵を描きたいという境遇で行きついたのが現代アートの世界だといっていた。だから、同じような人に道しるべをつくってあげたいとも語っていた。これはとんだ謙遜だと思ったけど、なんとなくいい人なのかな?と思ったりもした。まぁ実際会いたいかっていうと、うーんて感じだけど。



 堀江和真

江古田ユノバース

2016年11月11日
 先日10月29日から11月6日までの間、江古田ユニバースというイベントに参加していました。このイベントは江古田の街をアートの街にというような主旨のもと今年でたしか6年目を迎えます。ボクは去年から2回目の参加となります。
 西武池袋線江古田駅の周りにあるカフェやギャラリーなど様々な会場で美術やイラスト、クラフトやアクセサリーの展覧会が開かれ、ミュージシャンの方や身体のパフォーマンスをする方のイベントもたくさん発表されていたようです。ボク自身も会場を時間のあるときに見てまわりましたが、おもしろいもの、興味深いものと出会うことができました。

 さて、ボクが今回展示をした会場はどこかというと、駐輪場です。3階立ての立派な駐輪場の3階で展示をしました。当然、普段は自転車を置いておくための場所なので、普通のギャラリー空間とは違うわけですが、それだけに面白い展示ができるんじゃないかなぁと思いました。夏からちょくちょく江古田の街に行っては空間の寸法を細かくはかったり、展示の方法を試したりしながら、なるべく良い展示になるように努力しました。壁に穴をあけるわけにはいかないので、木材などを自転車置き場のフレームに固定して絵画をかけたり、ビールケースを置いてから絵を載せたりしました。また椅子を使った立体の作品も持ってきたり、イーゼルを使ってみたりと、無機質な空間に無理なく作品が収まるようにしました。展覧会自体はコンセプト、作品とその配置とも、なかなかおもしろいものができたなぁと思います。自己評価ではまずまずの展示だったと思います。

 展覧会としては成功だったかというと、ちょっと厳しいなって感じでした。アートシーズンの中にあって、たくさんの展覧会が開かれているこの時期、ボク自身、完全に競り負けてるなって思いました。それなら、他の時期にずらしてでも見てもらうとか、とにかく会場で作品を観てもらえれば、楽しんでいただける方も多いと思うので、そういうことを考えなくちゃいけないなぁとかって反省している。江古田ユニバース全体としてどうだったか?というとボクにはちょっとよくわからないけれど、ボクに人気、実力があれば、もっと貢献できたのになぁと思う。
 人に媚びるような作品をつくるつもりは全然ないけれど、会場にご足労いただける可能性のある方には、見に来てくださいと頭を下げるような気持ちでいる。実際手紙を添えて案内状も出すし、SNSをつかって宣伝もする。それでもご来場いただけない。でも、仕方がないと思う。作品をつくることと、作品をみてもらうという行為は全然違うものだと思うので、どこまでも謙虚に来てもらいたい人にはお願いし続けるしかない。
 
 でも、展覧会は作家としての戦場というだけでは、もちろん全然ない。それはボクの価値観ではあるけれど……。作家仲間や家族、友人などが顔を出してくれ、世間話に花を咲かせる。普段なかなか会えない友人ともこの期間、頻繁に会える。こういうことがあるから楽しい。学生の子たちがみて勉強になったといってくれたり、ふらりと来た人がリラックスして帰ったり……そういうことが妙にうれしい。中には、会期中3回も足を運んできてくれて、作品をみてくれた友人もいた。昨年も違う方だが、そういうことがあった。人との出会いは宝だなと思う。それを作品が生み出してくれているのだと思うと、悪くない気分になる。ボクが作家としても人間としても成熟していけば、この力は強くなり、一層楽しいことが多くなる。そう思うと力も湧いてくる。結局は「ヒト」なのだなと思う。

 まぁ、とにかくしばらくは発表の予定もないので、また普段の制作の日々に戻るとしよう。ひっそりとしたスタジオには人はあまり来ないけれど、それはそれでまた楽しいんだよね(笑)。

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            堀江和真