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SOMETHINKS

2017年11月10日
こんにちは。堀江和真です。

 さて、今回は先月10月14日から今月の11月5日まで、ボクが参加していた展覧会「SOMETHINKS」について、ちょっと書いてみようと思う。この企画は相模原スーパーオープンスタジオの関連のものです。まずはスーパーオープンスタジオについて、ちょっとだけ。スーパーオープンスタジオとは、相模原市内にあるアーティストのスタジオを一般に公開するイベントで、主にシェアスタジオと呼ばれる作家が複数固まって制作の場としているところを紹介しています。5年前から毎年行っていて今回で5回目になる。SOMETHINKSはこのイベントの企画の一つで、相模原市の施設「アートラボはしもと」で市内のアーティストによる自主企画の展覧会が複数同時開催されるというもの。今回ボクはこの企画に立候補して、参加させてもらいました。

 今年は全部で9人のアーティストによる企画展を行いましたが、映像、音、彫刻、インスタレーション、ペインティングと様々なアプローチの展覧会が開催された。その中で、ボクはペインティングと立体作品を主軸にした個展を開催したってわけです。展覧会の名前は「重ねること と 置くこと」だ。このタイトルは気に入って何回もつかっている。展覧会の内容は新作と旧作あわせて20点ほどの作品を展示したものとなりました。ここ数年のボクのアートワークの集大成といえる作品たちを並べたつもりです。ボクの制作のアプローチは自由に絵を描くということと、絵画の構造を追及すること、この二兎を同時に追うというもの。構造を説明する作品をつくる一方で、絵画の表面に作家がなにを描くかということについては自由にできるようにしたい。そんな思いで過ごしてきたこの数年のアートワークであったけれど、なかなか難しいなぁと思う面もあって、今回の展覧会でどうでるのかが見てみたかった。いただいた意見の主なものは、おおよその予想どおり、構造の作品はいらないという意見と、プリミティブな感じのする作品は好みじゃないといったような意見が一番多かった。つまり二兎ではなく一兎にしておけというわけである。ボクはどちらかというと感覚優先型のプリミティブな絵画を描くのが得意な人間だとは思う。でも30代になるころから、感覚だけで描いたものがなぜいいと思うのか?ある時は良く見えて、ある時は全然良く見えないということが急に不安になりはじまた。美術を学問ととらえなおして、絵画の中身、構造の部分を考え、学問的なアプローチができるようになれば誰もが一応は認める作品になるのではないか?誰よりも自分が納得できるのではないか?と考えるようになった。だけどこれはアスリートが全然違うフォームをとりいれていくのと同じでなかなか難しい。でも、感覚だけではなくて学ぶこと、それをとりいれて変わることはボクにとっては美術というものをより楽しいものとしてくれたように思う。今回の展覧会はボクが今まで行ってきた展覧会の中では一番の展示だったと思う。周囲の評判も上々といったところだった。でも心はすごく乾いている。まだまだ駄目という気持ちがすごくある。あともう一段レベルをあげられたら、何かが起こりそうという予感だけがある。でも方法がわからないから、やっぱりコツコツと積み重ねていくことしかできない。期待感がちょっとだけあるから、これはどうしたらいいんだ?という焦燥感になる。誰かと比べたりしないで、自分なりのステップアップをすることに重きを置きながらも、動きつづけていかなくちゃならない。一寸先は闇である。今後の課題とやりたい事についてはけっこう明確で以下の通りである。

・まずは勉強。本を読み、それらをまとめ、自分の考えを深める。美術史とのつながりなども、きちんと説明できるようになる

・ギャラリーなどをみてまわり、自分が好きなところで且つ自分の作品に興味を持ってもらえそうな場所を探す

・セルフプロモーションができるようになる

・絵本づくりなど美術とは少し違うジャンルにもチャレンジしてみる



 ……である。制作はもちろん毎日やりながら、これらのことも進めていきたい。考えてみれば贅沢な話である。学ぶこと、つくること、発表していくこと、これらのことができるというのはハッピーなことだと思う。当たり前のように感じてしまうこともあるけれど、たくさんの人のあたたかい協力がなければ、絶対できない。願わくは、もっとたくさんの人に協力してもらえるような人間力と作家力が欲しい。そして、その恩返しとして作品を通して何かできたらなと思う。

 話は戻るが、スーパーオープンスタジオである。このイベント、ご来場の人数こそあまり多いとは言えないが、とにかく美術関係者の来訪が多い。しかも普段ではなかなかお目にかかれない有名なキュレーターやアーティスト、ギャラリストがけっこうたくさん来る。そしてボクもそうだけど、自分が紹介できる人は、どんどん他のスタジオのアーティストたちに紹介していく。そうすることで、みんなでコネクションが共有できるだけでなく、スタジオに訪ねてくれたゲストの方も色々見れて楽しいし、新たなアーティストとの交流が生まれることもあるかもしれない。ボクにはまだまだ実力が欠落しているので、スーパーギャラリストやキュレーターに作品はみてもらえても、何も起こらない。でも見てもらえればどうにかなるといった幻想は抱かなくてすむ。このイベント、アーティストが主体となって行っている催しである。年間を通して美術業界の人々のスタジオビジットが行われるような街になっていったら素晴らしいと思う。相模原は現在20以上のシェアスタジオがあり、そこでは100人を超えるアーティストがしのぎを削っている。中には国内外で活躍するスター選手もちらほら。そういう意味では相模原は日本でも最大規模のアートの生産地といえるのではないか?というのは主催者の言い分である。東京近郊で美大が3つあり、家賃も安いからアーティストが住み着きやすい。またそういった環境からかホームセンターなどがたくさんあり資材が安く手に入りやすい。ボク自身は意識的にこの土地を選んだわけではない。小さい頃から、この土地に住み、普通に過ごし文系の大学を出た。小さいころから好きだった絵をずっと描いていて、近所のスタジオに運良く入ることができた。そして、その次の年からオープンスタジオが開催された。そしてよく見たら、そこはアーティストの楽園だったというわけだ。楽園といっても、みんな大抵貧乏だし、続けていくこと自体が難しいのが現状なんだけど。でもまぁ、なんだかやりがいもあるってことで良しとしよう。また来年が今から楽しみ。

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     堀江和真