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ネクストだ、堀江くん!!

こんにちは。堀江和真です。ボクは絵を描いたり、作品をつくりながら、毎日を過ごしています。このブログでは、そんな日々で感じた事や起こったことを、のんびり綴っています。


今日はBankARTの池田さんについて、ちょっと書いてみようかな。


ボクが、池田さんと出会ったのは、2011年の夏だった。彼が主宰するBankARTのレジデンスにボクは参加したのだ。東日本大震災があった年で冷房などはあまり使わず、節電しようという雰囲気があり、会場であるBankART NYKはいつも蒸し暑く、時間がなんだかゆっくり流れるような感じがしたのを覚えている。ボクは大好きな絵を夢中で描いて、それが本当に楽しかった。当時、ボクは美術が学問であることすら認識がなかったし、いわゆる現代アートといわれる範囲のものを何にも知らなかった。絵を描いててハッピー、それだけ。もちろん評価なんてされるわけもなく、池田さんとは、ほとんど話すらできなかった。だけど、このハッピーな時間...暑くて、身体はクタクタでも、わくわくしてたまらないといった感じは今でも覚えている。


あれから、11年、BankARTに足を運ぶうちに、池田さんとは少しずつ仲良くなっていった。ボクは少しだけ美術について学び、作品も少しロジカルに考えるようになった。BankARTに行けば、世間話をし、近況報告や、どんな作品をつくってるかなど、気軽にできるようにもなった。

ここ数年はボクは池田さんの顔をみると、いつも「なんか大きな仕事くださいよ」とまるで挨拶みたいに繰り返した。そうするといつも「堀江くん、もうちょい頑張れ。ネクストだ、ネクスト」と池田さんは少し困ったような顔をして返事をした。


頑張れ堀江くん。君はやればできる。まだ、本気出してないだろう?ネクストだ、ネクスト。


何かきっかけを掴めば君は活躍できる。もっとベストをつくせ、ネクストだ、ネクスト。


池田さんはいつでも、ボクにネクストと言いつづけてくれた。コイツ、駄目だとは言わずに、ネクストだと答え続けた。


池田さんとボクのような関係性は池田さんのまわりでは、おそらく特別なものではないだろう。池田さんの周りに集まってくるアーティストはみな、そのようにして、激励されていたのだと思う。


でもまぁ、物事にはいつか終わりがやってくる。


3月16日、池田さんは帰らぬ人になってしまった。


もう、ボクにネクストだ、と言ってくれる人はいない。無償に寂しい。先日、もっとも尊敬し、大切に思う人も、この世から去ってしまった。心にぽっかりと穴が空いているようだ。感情が削ぎ落とされ、悲しさとか楽しさとか、あんまり感じない。全部ガラス越しのような感じがする。


ネクストだ、堀江くん!!とあの世から、池田さんは叫んでいるかもしれないな。


ごめん、悪いけど、ネクストの所在がよくわからないや。ドアは開かない、カギはない。おまけに開ける気もしない。ただ、仕事は山積みだ。機械的に手を動かし、制作を続けるしかない。



堀江和真


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